ネイチャー生活倶楽部

モーハウス 光畑由佳様

女性が輝く社会を目指して
出産育児をもっと楽しく自由に!
授乳服で世界を変えていく

有限会社 モーハウス
代表取締役 光畑 由佳氏

https://mo-house.net/

自らの子育ての経験から「授乳できる服」を考案し、
それまで制限されがちだった母乳育児中の女性たちの行動や活動、
あるいは働く女性たちの活躍の場を大きく広げて来た「モーハウス」代表取締役の光畑由佳さん。
地球の気候変動に伴い頻発する自然災害においては、被災地の妊婦さんや
母乳育児中の女性たちに目を向け、支援活動も積極的に行っています。

光畑 由佳
有限会社 モーハウス 代表取締役

岡山県倉敷市生まれ。お茶の水女子大被服学科を卒業後、パルコに就職。
その後建築誌の編集者を経て結婚。
一男二女の母。1997年、モーハウス設立。
「都内のショップにて出産や子育てのサロンを定期的に開催。」
2009年度内閣府「女性チャレンジ賞」受賞。

「モーハウス」が作り上げてきた商品

急増する自然災害
被災地の厳しい環境下で
母乳育児中の女性たちを助けたい

 光畑さんが人前でも気づかれず授乳できる授乳服やブラを開発してから二十数年。出産育児を楽しくそして女性としてのライフスタイルを楽しめるよう、インナーからTシャツやトップス、ワンピースなど多彩でお洒落なアイテムを開発してきました。そんな商品開発とともに光畑さんが並行して力を入れてきたのが『モーハウスの母子支援プロジェクト』。妊婦さんや子育て中のママたちに向けた様々な支援活動を行っていますが、中でも昨今頻発する災害で被災した子育て中のママたちの支援活動です。最近では2020年7月に起きた熊本豪雨災害においても、熊本県助産師会を通じて授乳服やマスクなどの詰め合わせセットを被災地に送っています。
 「豪雨が襲ったのは私がちょうど熊本滞在中のことでした。大雨の恐怖を体験し、しかもあの被災地の映像を見てとても心が痛みました。被災地での授乳中の女性はなかなか手が差し伸べられていない現状です。そうした女性に少しでも不安や不便を取り除いて欲しいという思いでいっぱいです」
 モーハウスが被災地の支援活動を始めたのは2004年の新潟県中越地震からで、すでに14回の災害支援を行っています。国内だけに留まらず、2015年のネパール大地震の際は支援物資を送るだけではなく、現地の人が仕事を続けられるよう服の発注を継続。さらにお客様からの応援や感謝のメッセージを翻訳して届けたそうです。また、2011年の東日本大震災においてはモーハウスの本社があるつくば市も被災しながらも支援を決行。光畑さんの出身地でもある倉敷市が被災した2018年の西日本豪雨ではクラウドファウンディングやふるさと納税の支援などを行っています。  「被災してストレスで母乳が止まったり避難所での授乳をためらったり、そんなママがたくさんいます。本来は災害時で一番重宝するのが母乳なのです」
 これまでの活動に対してモーハウスの元へたくさんの感謝の手紙やメールが届けられ、また支援活動が縁で復興イベントを開いたりと授乳服が繋ぐ交流の輪が広がっているそうです。

カラーバリエーションも豊富な「モーハウスブラ」。

妊娠、出産、授乳期のデリケートな肌を優しくサポートします。


マタニティ対応の授乳服のワンピース。

バックチェックフレアーワンピース授乳服&マタニティ服。

子育ては“我がまま”でいい
出産育児がハードルではなく女性の美しい転換期となるように

 2020年9月、これまで15年間(全国の)アンテナショップとして親しまれてきた東京都渋谷区の『モーハウス青山ショップ』を休業することになりました。そしてそれに代わって新しく誕生したのが『モーハウス日本橋ショップ』。
 「青山ショップは多くの方との思い出がいっぱい詰まっていてとても残念ではありますが、授乳服や子連れ出勤を多くの方に知っていただこうという当初の目的はある程度果たせたので、もっとサロン的な場所をという思いもあり、またご縁あって都内の拠点を日本橋に移すことに致しました。東京駅から歩いて10分ほど、地下鉄の三越前駅からは1分の場所で、いろいろなイベントも開催する予定です」
 店内は吉野杉を使った広いフローリングで、素足で過ごせる空間。ショッピングはもちろん気軽におむつ替えや授乳に立ち寄ったり子育ての相談や情報交換をしたりと、多くの女性が集うサロンを目指しています。
 「女性を取り巻く環境は確実に変わり、働く女性の増加や社会活動への参加など女性の活動の場は広がってきました。しかしその成長に見合うほど、女性たちの負担は軽減され自由を得ているのでしょうか。はなはだ疑問です。私たち企業のコンセプトは『子育ては我がままでいい』ということです。多くの女性が堂々と子育てを楽しみながら自由な生活ができるよう、これからも活動を続けたいと思っています」
 出産育児を人生のハードルでなく「女性の美しい転換点に」そんな社会を目指して、 “授乳服でもっと世界を変えていく”その思いを胸に光畑さんは走り続けます。

Mo-House 日本橋ショップ
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-6-13-2F
電話:03-6262-7701


日本橋ショップにはマタニティや授乳期の
多彩なアイテムがそろっています。

全国で公演活動を行う光畑さん。


多くの女性からの要望を受けて備蓄セットの販売も始めました。

「ないなら作ろう」
様々な工夫と厳選素材を駆使して

 始まりは、2人目の子どもを出産してすぐ、生後1ヶ月の子どもを連れての外出のときでした。電車の中で突然泣き出してしまったんです。困ってしまって、とっさに電車の中で授乳を始めたのですが、ひどく恥ずかしい思いをしました。
 その時、母乳育児の不便さを痛感。どうして女性は、子ども生んだとたんに色々と行動に制約ができるんだろう。授乳中であろうと出かけることは多々あるし、子どもがお腹を空かせればどんな場所でも授乳しないといけません。そんなお母さんたちを応援する服、出かけられる服を創ろう、と思ったのがきっかけです。
 当時、国産のマタニティ用のアイテムは少なく、授乳には使い勝手がよくありませんでした。だったら作るしかない!友人のデザイナーにデザインを頼み、縫製は自宅のある茨城県の縫製工場にお願いしました。
 最初に考案した一つが授乳用ブラジャーでした。いつでも授乳できるように、乳房をカバーする部分に穴をあけて上からふたをするような形にしました。Tシャツは、切れ目を入れてみました。これは今でも人気商品の一つです。

現在も、Tシャツは定番。色数も多数揃っています。

創業当初からある両脇に切れ目のあるTシャツ。
切れ目から母乳を与えることができます。

既成の価値に捕らわれない
自分の生き方を自由にデザインできる社会へ

 外出着として初期のころに創ったのがレイヤータイプ。前身ごろを2枚重ねて外側の前身ごろが授乳しているのを上手に隠してくれます。妊娠中でも着られるデザインで、特許も取っています。ほかにサイドスリップ、アンサンブルタイプ、わりと新しいデザインではカシュクールタイプもあります。こだわるのは、肌触りです。赤ちゃんに触れるものですから刺激が少ない肌触りが良いもの。家庭で洗えて、アイロンなどの手間がかからないものなど、いろんな所に配慮して生地選びをしてデザインしています。
 さらに産前産後、体形が変わってもずっと着ることができる「一人UD(ユニバーサルデザイン)」がコンセプト。最近では、授乳中のお母さんとそのお母さん、親子で色違いの授乳服を買われる方もいます。ブラは乳がんの患者さんが術後に使われることもあります。
 助産師さんと一緒に考案した現在販売しているブラはカップの開け閉めの手間がいらない、クロスタイプ。色々と改良されとても着け心地が好評で、ずっと使いたいという要望から東京都立産業技術研究センターと共同研究を行いバストメイクも可能な『モーブラしゃんと』を発売しました。

前身頃2枚重ねで、赤ちゃんの
顔をふさがず授乳できます。

授乳期のお母さんだけでなく、
乳がん治療中の患者さんにも喜ばれる
ユニバーサルデザインです。

授乳服作りが、子連れ出勤できる「働く場創り」へ。
女性が働きたいときに働ける場を創ってきました。

モーハウスは、子ども連れで出勤し、
子どもと一緒に仕事をしています。

 モーハウスのスタッフは現在40人ほど。子育て中で子連れ出勤で働いているスタッフもいます。そんな働くお母さんたちが参加できるよう、職場は靴を脱ぎ子どもを連れて働ける環境をつくりました。
 お母さんを自由にする授乳服を「ないから創ろう」とやってきましたが、本当に私が「ないから創りたかった」ものは、既成の価値に縛られないで自分の生き方を自由にデザインできる社会だったように思います。

子育て中のお母さんたちを応援
する目的で、授乳ショーやオープ
ンハウスの子育てセミナーも開
催されています。

子育て中も外出し、ショッピングなど
を楽しみたいものです。そのお手伝い
をモーハウスは行っています。
(手前の赤ちゃん連れの女性は
スタッフです。)