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“女性が動けば何かが変わる”
―持続可能な社会を目指して―
プロフィール
1963年愛媛県南宇和郡愛南町生まれ。立命館大学卒。米ペンシルベニア大学語学留学。
奈良日日新聞記者、国際環境NGOグリーピースジャパン勤務などを経て、
2017年愛南町初の女性町議会議員としてトップ当選。愛南町の持続可能な発展とともに
環境、福祉、女性の政治参加などに力を入れている。
3.11での福島第一原発事故は非常に大きな影響をもたらす
とともに、脱原発の機運を高めるきっかけにもなりました。
色々な国をまわり、環境問題やジェンダー(男女の社会的性差)バランスについても色々と学び、両者は密接に関連していると感じるようになりました。特にそれを強く感じたのは、3.11の福島第一原発事故後の原発に関する数々の世論調査の結果を見たときでした。そこにはあきらかに男女の思考の傾向の違いが現れていました。事故後、脱原発を求める人の割合は変化しても、男女による傾向だけは変わらず、どの世論調査でも常に女性のほうが男性よりも脱原発を望んでいたのです。その差は大きいときで20ポイントにも上りました。たしかに周囲の多くの女性たちからも、自分は脱原発を望むが、夫は「経済に悪影響をもたらす」「原発の技術を高めればよい」と言う、との声を聞きました。
ジェンダーバランスに貢献した歴代のさまざまな政党の
女性議員について説明をする環境緑の党 国会議員
グンボ・エリクソンさん。スウェーデン国会議事堂内にて。
この男女の傾向の差は他にもあるのだろうか、社会や政治のあり方にも関係するのだろうかと考え始め、女性議員が国会の43.6%も占めるスウェーデンを5年前に訪ねて各政党の女性団体やジェンダー関連のNGO、研究機関にインタビューを行いました。
驚いたことに全ての人が男女の傾向の違いを共通の認識として持ち、その上で意思決定の場でのジェンダーバランスの必要性を語っていたことです。男女比のバランスが意思決定に影響を及ぼすことになるからです。スウェーデンでは各政党の女性組織が党を超えて連帯して力を合わせてきたといいます。各党が候補者名簿を男女交互にしているのもその成果の一つで、政治におけるジェンダー平等に近づけることができました。政治に女性の声が反映されているスウェーデンは、出生率も高く世界の中でも毎年、幸福度ランキング( https://s3.amazonaws.com/happiness-report/2018/WHR_web.pdf )で上位に入っています。
女性たちはそれぞれの分野を超えて連帯していて、政治、メディア、教育関係、NGOなど様々な分野の市民がつながって情報を共有し、行政などへともに働きかけを行いながら世界で最もジェンダー平等に近い国のひとつへと到達していったようです。
ドイツを脱原発に導いたドイツ政府原発問題倫理委員会の委員であり『女性が政治を変えるとき』(立教大学名誉教授五十嵐暁郎さんと共著・岩波文庫)の著者であるベルリン自由大学教授ミランダ・A・シュラーズさんも、著書中で男女の政治の違いについて述べています。
女性の政治は環境、福祉、医療、教育、文化、人権、平和などの「ソフト」の政策が中心で、その中核にある価値は生活、生命、人生である。これらは脱工業化時代に典型的な政策で、コミュニティー全体の利益を増進する。対して男性の政治は公共事業などの「ハード」な政策が中心で、高度経済成長期時代を背景とし利益や利権を争奪、党派的な利害関係に根差す。だからこそ、大災害からの復興や脱原発、エネルギー政策など、将来の社会にとって重要な課題を考えるとき、女性がリードする政治に注目すべきと。
残念ながら日本においては国会議員(衆議院)で女性が占める割合は10.1%。世界193カ国中で157位(2017年10月)。先進国の中では最下位、世界各国を見ても最下位レベルです。地方議員においては12.1%(2015年現在)。
北欧最大のセクシャルマイノリティーの祭典、ストック
ホルム・プライド。市の中心部を約5万人がパレード、
数十万人の市民が街頭から声援を送る。
ストックホルムの町を歩くと平日の昼間子連れの男性が多いのに驚きました。しかも連れている子どもの数は二人がざら。スウェーデンでは育児休暇を取得する男性が約80%(日本はわずか2.6%)。その理由は両親併せて480日が認められていて、そのうち父親のみと母親のみの取得期間が60日と定められ父母のどちらか一方だけではなく、バランス良く育児休暇をとるようにも配慮されているのです。育休の所得補償は80%が行政から、残り20%が事業所から支払う場合が多いのです(育児に関する数字はいずれもインタビュー時の2015年現在)。
日本では少子化対策、女性活躍社会と様々な政策が叫ばれていますが、政治のほかあらゆる意思決定の場でジェンダーバランスを取ろうとするスウェーデンに学ぶべき要素は大いにあると考えます。
もっと女性の意見が社会に反映されたらきっと何かが変わるはずです。保育園の問題、育休、高齢者へのサポート、環境など女性だから気づくことがあるはずです。みんなのお財布の中身(税金)を何にまわすかを決めるのが政治。女性が気づくことや困っていることを解決するために税金をまわすように声を届ければ、暮らしはずっとよくなりきっとスウェーデンのように出生率が高まり国民の幸福度も高くなるでしょう。それは女性にとってだけでなく男性にとっても暮らしやすい社会となるはずです。
コンクリートジャングルは、公共事業など「ハード」な政策
が中心の男性的な政治の象徴とも受け取れます。
今、国だけでなく多くの県や市町村でも借金をかかえています。自分の住んでいるまちのその額がいくらなのか見て聞いて、限りあるみんなのお財布(税金)をどこにまわすのがまず必要か、まわりの人と話し合ってみてはいかがでしょう。そしてその声を議員や行政に届ける。聞いてもらえないと思ったら誰かに立候補を働きかけるか自分が立候補する。
政治は、家庭で家計の使いみちを話し合って決めることと同じだと思うのです。一人ひとりが生きいきと暮らせる持続可能なまちをつくるために、まわりに目を向けて1歩踏みだしてみましょう。まず社会に政治に関心を寄せることが大切ではないかと思います。