生産者の方々にお話をお伺いしました
「棚田米」生産者の方々です
大変手間のかかる完全無農薬・無化学肥料の棚田米づくり―
この棚田米づくりに取り組み、
私たちに米づくりについて教えていただく5人の生産者の方々です。
熊本県南阿蘇村 生産者 大森 博 さん
“水の生まれる郷”南阿蘇での棚田米づくり。
大事な地下水も守り続けます。
南阿蘇は2016年の熊本地震で大打撃を受け、うちも自宅が半壊、棚田もあちこちで土砂崩れが起き田植えの準備をしていた稲も流されてしまうなど、さまざまな困難に見舞われました。
しかし、友人や知人が無農薬の種を分けてくれたり棚田の修復を手分けして手伝ってくれたり…この時ほど人と人との繋がり、温かさを感じたことはありません。
化学肥料や農薬を使わず育った稲は、病気や虫、雑草に自らの力で育ち大地の栄養をしっかり吸収して育ちます。すごい生命力が宿っています。地震さえも乗り越えた逞しさが備わっています。そこに私自身パワーをもらっています。
南阿蘇の棚田の水は、10年後の熊本の地下水―
涵養のためにも棚田を守り続けます。
南阿蘇は「水の生まれる郷」と言われていて、日本名水百選に選ばれた「白川水源」もあります。きれいな地下水を守るために、棚田は大事な役割を果たします。だから稲刈りの後も田んぼに水を張って、できるだけ地中に水が浸みこむようにしています。10年後のきれいな地下水を守るため、続けていきたいと思います。
熊本県菊池市 生産者 武藤 計臣 さん
産廃場に反対し、山ごと買い取り20数年。
目指すは“自然と農業の共生”です。
ここは天水田と言って、菊池渓谷(日本の滝百選や名水百選に選ばれる景勝地)がすぐそばにある恵まれた土地です。ただ、山深くこの棚田に来るまでに一苦労。人口が減り高齢化が進み、耕作放棄地が増えてきました。
ある日この土地が産業廃棄物の処分場になる話が持ち上がり、地元住民で反対運動をして阻止したのですが、その時に一大決心をしてこの土地一帯を買い取りました。
レイチェル・カーソンの「沈黙の春」に出会い衝撃を受け、農薬散布や化学肥料で育てる農業に疑問を持つようにもなって。それ以来「自然と農業の共生」を目指し、自然農法に取り組み続けています。
自然相手というのは本当に難しい面もあるけれど、そんな棚田米づくりを応援してくださる方が増えれば、自然農法に取り組む農家さんも増えると思います。みんなで子供たち孫たちの代まで美しいこの故郷を残していきたいですね。
熊本県和泉町 生産者 菅原 陽介 さん
種と土に力があれば作物は立派に育ちます。
炭素循環農法で育ったお米のおいしさを、
知ってもらえたら嬉しいです!
子どもの頃から祖父の畑仕事を見て、「農薬をまくとどうして草だけ枯れて稲は育つのだろう。何で雑草が育たない所で野菜は育つのだろう」そんな疑問を持っていて…大学で稲の研究に取り組み、農薬と肥料を使わない研究に没頭しました。結果「種と土に力があれば、農薬も肥料もいらずに立派に育つ」ということに行き着きました。
その代わりにキノコの菌床や木材チップ、木の皮など炭素率が高いものを土に入れ、発酵させて微生物が育ちやすい環境にしてあげる。その微生物が植物を育てていくという「炭素循環法」を取り入れています。
最初は祖父にも反対されましたが、4年目から収量が増え良質なお米や野菜が育つように。やっと認めてくれるようになりました。長年の慣習に囚われず新たな道を切り開くことで、農業に取り組む若者が増えることを期待しています。
熊本県南小国町 生産者 須古 真 さん
人のために何か役に立ちたい!
山深い阿蘇・南小国町で一念発起して
有機農業の世界に飛び込みました。
以前は内装業の仕事に携わっていましたが、クロスや接着剤などさまざまな化学製品を取り扱っていてとても違和感を感じていました。かといって珪藻土や漆喰などの自然素材は高くてなかなかお客さんに提供できないというジレンマ状態。そんな中、阿蘇で自然農法に取り組む友人の姿を見て「自分も人の為に役に立ちたい!」と思ったのが、農業を始めたきっかけです。
耕作放棄地の田んぼを借りて、米ヌカやおがくずなどで土づくりに工夫を重ねる日々。少しずつ収量が増えていって、「自分の田んぼも任せたい」と近所のお年寄りの方からも声を掛けられるように。お陰で田んぼも年々増えています。美味しいお米で身体の中から元気になってもらえたら嬉しいですね!
熊本県産山村 生産者 佐藤 高弘 さん
全国棚田百選に選ばれた「扇棚田」。
山吹水源の湧水が美味しいお米を育てます。
両親の跡を継いで農業の道を選んだのは、やはりこの素晴らしい「扇棚田」を存続させたいから。棚田には飲料水にもなる山吹水源を引き込んでいます。田んぼを経て下流に流れていくので、きれいな水でないと。農薬は使えません。水源の水門の開閉や農水路の掃除など維持が大変だけど、ボランティアの方々の手伝いもあり、続けることができています。
四季折々に絶景が広がる扇棚田。春は水を張った水田が鏡のように。夏の緑の稲穂や秋の黄金色の稲穂の時期、冬の間は凍った田んぼに雪が積もってとても綺麗です。